おかあちゃん
いつの間にか、年もいって
６５、いやもう今年は６６歳。
いっつもイライラ、イライラしてる。
買い物から走って帰ってきて
玄関で子供みたいに靴をすっ飛ばして
台所にいく。
あれ買い忘れた！パン！って
また買い物袋を持って玄関にいって
誰やの！
玄関の靴がぐっちゃぐちゃや！
怒ってるけど
それ、お母ちゃんや。
て言うたら
人のせいにして！て怒られるのはわかってる。
ただ黙っておくほうが安全や。
帰ってきたと思ったら
今、買ってきたパンがどこにもない！
そう言うから一緒に探す。
見つけて渡したら
いやっ、どこにあったん！？って聞く。
そこの戸棚の２段目、と言ったら
あーせやせや、
誰にも食べられへんようにって
そこに隠したんやったわ。
あんたはそのパン見たらすぐ食べてまうやろ？
失くしもんを見た途端、
戸棚に置くまでの記憶がよみがえる。
ありがとうも言ってくれへんし
しかもこっちはなんや軽い犯罪者扱いや。
このうちにあるもんは
なんでも食べてええって言うのはおかあちゃんやがな。
でも、そのことはあえて言わん。
言ったらろくでもない目にあう。
エプロンにハンドソープをいっぱい飛ばしてるから
なにしてん！？って聞いてみた。
手ぇ、洗おうと思ってノズルを押したら
こっちに飛んできたんや！！怒
あぁ、ノズルに
液だれしたソープがかたまってしもて
押したらソープがまっすぐ飛んでいくこと
ある。
ノズルの下に用意してた手には
一滴もソープがついてないから
びっくりするわ。
せやけど
お母ちゃんをイライラさせんといてくれ。
そう思ってノズルをキレイに拭いておく。
お母ちゃん。
晩飯のあとメロンを切って
一緒に食べようと渡してくれた。
あんた、大きい方、食べ。
俺はもう３０代。
１０代の頃みたいには食べられへん。
そんなことを言うたら
なんで食べへんのや！
せっかく切ったのに！
怒られるから
黙って食べる。
でもお母ちゃんには
まだまだ食べ盛りの息子扱いや。
あんたが結婚したら
これを持っていったらええわ。
台所の戸棚から古い容器を出して見せてくる。
プラッチックのいかにも昭和な古い容器や。
黄ばんでるやん。今、令和やで。
うっかり
劣化してるやんって言うてしまった。
あんた！
これタッパーウェアやで！
ブランドの問題とちゃう。
経年劣化が問題や。
こんな黄ばんだタッパー、
タッパーウェアの人も
もう使うのやめてくれって言うわ。
でも
お母ちゃんには通用せーへん。
そんなに好きなら
死んだときには棺桶に入れとこか。
それにしても
お母ちゃん、年とったんやな。
ちょっと前はできてたことが
できなくなってきてる。
イライラして
八つ当たり。
それでも
大事にせなあかんな。
この世にたった一人の母親やし。
大阪は中崎町の占い教室“かんじんや”
このブログの登場人物は
かんじんやの守り巳 丈乃丞 /
軽薄のケー助 /
武者小路くん /
どくとる玄白 /
天 翔 /
